登記相談があったのはご長男から
『一人株主』かつ役員は同一人物である『一人取締役』の機関構成の株式会社です。
株主かつ取締役だった当該人が死亡し(株主も経営者もいない状態)、以前より仕事を手伝っていた相続人のひとりである長男が事業を引き継ぎたいとのことで、登記相談を受けました。
執行機関である取締役が一人だけ(この場合、代表取締役となる)、当該人が死亡した場合、会社における業務執行手続きは止まってしまいます。
もちろん法人としては存続しているので、従業員がいれば、しばらくの間は日常業務について問題は生じないかもしれません。
しかしながら、取引先と契約を結ぶ、金融機関から融資を受ける、その他の会社の手続において、(代表)取締役の執行が必要な場面は多くあります。いずれ会社が立ち行かなくなることは明白です。
上記の理由から、手続きを早急に進める必要がありました。
当然、取締役の地位は相続の対象となりませんので、死亡した取締役の代わりに新たな取締役を選任する必要があります。
ここで少し問題が生じます。
株主総会を招集するのは原則取締役、取締役を選任するのは株主です。
本事案においては、その取締役も株主も亡くなっています。
こういった場合、会社法では裁判所において一時取締役の選任申立てすることができる旨が規定されています。
利害関係人(取締役,株主,監査役,従業員,債権者等)による申し立て、予納金の納付(弁護士等が候補となるためその報酬)、そして裁判所による仮取締役の選任の流れとなります。
当然ですが多くの費用と時間がかかります。
しかしながら「上記の要件が欠けると考えられる場合」として下記文言が裁判所において示されています。
「取締役等が欠けたものの、取締役等選任のための株主総会が開催可能な場合には、会社法が予定した会社内部における自律的な選任手続ができる場合」
会社法上、株主総会を開催する方法は何通りか規定されています。
原則は取締役が株主総会を招集する方法です。
その他、少数株主からの取締役に対する株主総会招集請求(会社法297条)、株主全員の書面等同意による株主総会の決議の省略(=みなし決議,会社法第319条第1項)などです。
319①の手続きについては、株主からの決議事項の提案も認められており、これに株主全員の書面上(または電磁記録上)の同意があれば決議が成立します。
今回は、この方式で進めることにしました。
第一に株式の帰属先を確定(具体的には相続手続)することから開始しました。
死亡した株主である被相続人は全ての株式を所有していました。
相続人の間での遺産分割協議の結果、事業を引き継ぐ予定の長男が全株式を相続することとなり、当該会社の株主は確定しました。
次は新取締役を選任する株主総会です。
先述した「みなし決議」にて手続きを進めます。
書面として作成するのは新取締役を選任するための株主の提案書、それに対する株主の同意書、みなし決議をした株主総会議事録です。
また新取締役の就任に関する各種書類、前取締役の死亡の登記もしなくてはならないため、必要な書類を準備します。
書類が揃ったところで、直ちに登記申請書を作成し、管轄法務局へ申請しました。
今回の「一人株主」兼「一人取締役」のケースでは、被相続人の所有する株式についての遺産分割協議が円滑に進んだこと、また、後継者がいたことから比較的早い段階で事業継続の道筋をつけることができました。
同じようなケースでも、遺産分割協議が進まない、後継者が見つからないなど、最終的に事業の継続が難航する可能性もあります。
そういった事態を未然に防げるよう事前に対策をすることも可能ですので、ぜひ当事務所までご相談ください。
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